―お店のプロフィールを伺います。
生活広場ウイズは、兵庫県尼崎市の下町の雰囲気の残る住宅街の中、大通りから一本中に入った売り場面積120坪小型の単独店舗です。もともとは、昭和初期に創設された共栄市場でしたが、1997年1月の阪神大震災で市場が半壊したため、同年12月に新たに市場の店主たちと組合を立ち上げ、店を寄せ集める形でスーパーマーケットとして再スタートしたのです。当初の組合員は40人いたのですが、再スタートとしてウイズへの参加を決めたのはたった7人でした。そのため、従来の業態を変更してのスタートとなりました。業態を変えての再スタートにはリスクも伴いましたが、やはり私自身、この地で育ち、暮らし続けてきた地域への思いが強かったこともあり、「地域の台所を支える」という使命感のようなものが前向きな気持ちを支えてくれたのだと思います。
―業態を変えてとのことですが。
店舗は一つですが、店内は青果、精肉、鮮魚、グローサリーなどの部門により14のオーナーからなる専門店で構成されています。当店は14の専門店「達人(Wizard)」が集まった「地域と一緒に(With)」をモットーに設立されました。ウイズという店名もそれに由来しています。店舗周辺は、半径1km内に関西スーパー、平和堂(フレンドマート)、イズミヤ(まるとく市場)、万代など、大手・中堅スーパーがひしめく激戦区なので、それら競合店に伍していくためにも、なにより地域密着を基本に、単独店の強みである独自性を反映させた店づくりを推進しています。よそでは買えない商品を、いかにこの狭い店舗の中におけるか、がカギだと常々考えているので、価格と鮮度にこだわった品揃えは特に重要なポイントです。また、たとえば、百貨店や高級スーパーでしか見ないような食材や、2万円を超えるような高価な鍋も陳列されているように、品ぞろえの多様さもウイズの大きな特徴です。そのほか、ポイントサービスでは、毎月のお買上累計金額により翌月のポイントがアップする仕組みで手厚く会員様に還元し、売上利用率90%を超えるカード会員様の支持を得ています。
―地域密着への取り組みについて。
そうですね、レシートキャンペーンもその一つかと思います。お客様から応募されたレシートのお買い上げ金額をもとに、その何パーセントかを楽器に換えて地元中学校の吹奏楽部へ贈り、生徒たちはそのお礼に地域の方々へのサンクスコンサートを開くといったイベントですが、こうした活動にも積極的に取り組んでいます。また、近年、当たり前になりつつある「宅配サービス」ですが、当店では1998年に開始し、地域住民との結びつきをより強いものにするきっかけとなりました。当店の商圏が高齢者の比率が高い地域で、お年寄りの単身世帯が多く、一方、小さなお子さんがいて自由に買い物などに出られない主婦の方々も多い地域という背景もあり、地元の台所を預かる「御用聞き」になるという信念を持って、当時はまだ珍しかった宅配を開始したのです。現在では、インターネットからの注文だけでなくiPadを使用した宅配サービスをソフトバンクとのアライアンスにより展開しています。
―これからの方向性について。
こだわりの品揃えで、より「美味しい」ものを提供すること。知恵と工夫でお客様に喜んでもらえる「楽しい」店づくりをすること。「ウイズがあってよかった」と思っていただけること。これらを日々実践しつつ、全国の単独店のモデルとなれるようにしていきたい、ということでしょうか。今後も商圏内に大手スーパー出店の噂が後を絶ちませんが、日本が大手だけになっては面白くありません。私どものような単独店が無くなってはいけない、なにより地域に根差した食品スーパーとして、日本の食文化とその多様性を発信していきたい、という強い気持ちを持っていきたいと思います。