―「伊豆・村の駅」の成り立ちをご紹介ください。
村の駅は、静岡県の三島大社の門前町としても有名な三島市の、伊豆観光で大動脈となる国道136号線沿いに立地しています。運営母体は株式会社TTCという企業です。TTCは菓子、海産物、漬物、惣菜といった、その地域ならではの特産物を活かした土産品の企画開発や、観光土産店の運営などで新しい観光商業のトータルプロデュースを展開しています。この株式会社TTCの新規事業として7年前にオープンしたのが食のテーマパーク「伊豆・村の駅」です。自治体などが運営する「道の駅」とは異なり、農産物や海産物、たまごや、園芸といった伊豆の食の恵みのこだわりを集結させた点が特徴で、9000平方メートルの敷地の中には個性あふれる店舗が軒を連ねています。
―各店舗の特徴はどのようなところでしょう。
まず、なんといっても目玉は農産物直売所です。地産地消を理想に近づけるべく、100人以上の地元農家と販売組織をつくり、携帯メールでリアルタイムに販売情報を伝えることにより、随時、追加納入ができる態勢を構築しました。さらに、消費者の皆様に安心、安全、新鮮を実感してもらうため、生産者の方々のプロフィールを紹介させていただいています。鮮魚については、社員が直接沼津の魚市場から仕入れているので、獲れたて新鮮な地元の海の幸をお買い求めいただけます。生鮮品に加えて、加工品も大きな特徴のひとつです。TTC河越康行社長の「自分でやらないとノウハウを蓄積できない」という信念のもと、特に、地元の素材の良さを最大限に引き出した加工品は自社で企画開発したものがほとんどです。また、個性豊かな店舗では、原料に決して妥協しないざる豆腐が自慢の「がんこ屋」、手作りスイーツやチーズが並ぶ「デュ・フロマージュ」、富士の恵みを受けた手もみ茶の専門店「幸寿庵」、地元米をその場で精米する「こめやの権太郎」といった、それぞれに思い入れの強い売場が並んでいます。さらに、村の駅では、物販だけでなく、郷土料理やこだわりの食材を使った料理を味わえる場も設けています。たとえば、「たまごや」は、地元のこだわり卵と伊豆の天城軍鶏を使った親子丼をはじめ、さまざまな卵料理が食べられるほか、シュークリームやプリンなども販売している卵の専門店で、「伊豆・村の駅」のシンボルのひとつです。そのほかにも、秘伝のだし汁と新鮮な玉子でじっくりと何層にも焼き上げた「伝さん秘伝の玉子焼」が自慢の「うめぇら食堂」や、海鮮丼の専門店「丼屋九兵衛」などがあります。
―今後の方向性などについてお聞かせください。
もともと「伊豆・村の駅」の構想は河越社長の想いから始まりました。観光土産品や特産物の企画開発や売場改革を行っている中の新たな挑戦でした。研究熱心な河越社長は面白い観光施設や旨いものがあると聞けば、すぐさまその地に足を運び、成功事例を探るため全国を巡り、成功の背景を議論しアイデアを膨らませました。その中で地産地消の仕組みを生産者の方々と構築し、加工品のショップも地元にパートナーを探してコンセプトを練りあげていったのです。前例のない新しい店舗の試みで大変な苦労もありましたが、2006年1月にオープンをすることができました。幸い、オープン以来「伊豆・村の駅」は、地元のお客様や観光客の皆様に口コミなどで知れ渡るようになり、またリピートも多くいただき、地域に根差した観光スポットになりました。同時に、今や観光商業の新しいビジネスモデルになっています。また、「伊豆・村の駅」を皮切りに、2008年7月には、栃木県那須塩原市に「ロコマーケット」、2010年4月には、北海道北広島市に「ロコファームビレッジ」をオープン。今後も、創業以来の「ものづくりとサービスの本質」の精神を見据えて、「伊豆・村の駅」のような地域の活性化に繋がる施設の全国展開を通じ、新観光商業を創造し続けていきたいと思います。